多発性硬化症(MS)
患者さんの
ライフステージ
教師としてがんばっていた女性が、結婚後に発症。
出産、子育てを経てきた、これまでの人生を振り返ります。
01
初発症状
目がうまく動かない。何かおかしい…最初に症状が出たのは29歳のこと。
目が覚めると、時計や自分の手が二重に見えました。鏡を見ると、左目がうまく動かせていません。経験したことのない奇妙な視界で、まっすぐ歩くこともできなくて夫に助けを求めました。
「どうしたの?」と聞かれても、「おかしい」としか表現できない怖い体験でした。
発症当日は救急病院を受診し、様子を見ることに。翌日には、目の症状は治まりましたが、発症前日に総合病院の歯科で「親知らず」を抜いていたので関係があるかと思い、歯科の先生に相談したところ、脳神経内科を紹介されました。※
早くに脳神経内科を受診できたことは、良かったと思います。
- ※今回の抜歯とMSとの関係は明らかではありませんが、一般的に関係があるとはいわれていません。
今回、親知らずを抜いた直後に普段と異なる症状がでたことから、抜歯が原因ではないかと歯科の先生に相談されました。
02
診断
MSを詳しく知った。ショックだった。総合病院の神経内科でMSの可能性が高いと告げられました。
診断当時、MSは原因もわからず、治療法も少なくて、少しずつ症状が悪化する難病とされていたので、大きなショックを受けました。
結婚して2年が過ぎ、仕事にもやり甲斐を感じていた頃だったので、描いていた未来が遠のいたようで、自分がとても無力に感じられました。
その後、検査などからMSと診断が確定しました。
早い段階で診断がつき治療を開始できたから、その後の症状の悪化を抑えることができたのだと、あの頃の自分を励ましてあげたいと思います。
03
治療を開始
主治医からのアドバイスで、希望がもてた!!
主治医から、「だいじょうぶ。MSの治療は進歩している。仕事も続けなさい。子どもは産める」とアドバイスをいただき、前向きな気持ちで治療を始めることができました。
ステロイドパルス療法※を受けながらしばらくは仕事を続けていたのですが、教師という仕事は何かとストレスが多く、また体力的な負担も大きかったので退職を決断しました。
- ※大量のステロイドを数日間点滴する治療
04
治療と
向き合う日々
つらい治療も、対策を講じて続けてきた
発症してから12年が経過し、何度か再発を経験してステロイドパルス療法を5回受けています。自覚症状がないのに、MRIで確認された再発で、ステロイドパルス療法を受けることは、受け入れがたいものがありました。
寛解期も治療を続けました。どのような副作用が起こるかわかってきたので、主治医に相談したところ、
寒気が起きそうなときには厚めの布団を使うなど対策を教えていただきました。
その後、お薬の選択肢も増えてきて、私が発症したころと比べて治療法が進歩していることを実感します。新しい薬が増えるのは患者にとって大きな希望です。
05
家族との絆、
そして出産
離婚を切り出した私に家族は…
MSと診断され、自分はパートナーとしての役割を果たせないと思い詰めて離婚を切り出しましたが、夫は「そんなことで、あなたの価値は変わらない」と静かに言ってくれました。
夫の両親も「息子は、あなたと一緒にいることが幸せだから」と応援してくれました。
主治医のサポートもあって2度の出産を無事に乗り越えることができました。
薬を再開するため産後1ヵ月で断乳しました。今でも授乳する女性の姿を見かけると哀しい思いもわきますが、愛情を注ぐ方法は母乳だけではないと思います。
06
育児と
仕事の両立
周囲の人のサポートには、感謝するばかり
子育ては、夫、両親、保育園・幼稚園のスタッフほか、多くの力を借りてなんとかこなせています。体調が悪くて横になっている間、母だけでなく父も子どもを見てくれたりしています。もちろん夫も大活躍。
仕事は辞めていましたが、1人目の出産後にアルバイトという形で仕事を再開しました。
発症前はバリバリ働く自分に誇りを持っていたので、簡単な仕事しかできない今の自分に落ち込むこともありますが、それでも仕事に復帰できたことは、嬉しい。
07
定期的な検査と
再発
いつか、海外旅行にも行けるかな
定期的にMRIなどの検査を受けて、これまで数回の再発が確認されました。自覚症状がない場合でも再発があれば治療を受けています。早めに対処することで症状に悩むことも少なく進行も抑えられていると思いますし、適切な治療を続けることで普通の暮らしができていると思います。
健康な人に比べれば休息や注意が必要なこともありますが、MSになっても普通に暮らしていけるというのが今の実感です。
夫とは、「いつか一緒に海外旅行に行きたいね」と話をしています。
- *多発性硬化症の経過は様々です。
ご自身の症状で気になることはかかりつけの
医療機関へお問い合わせください。